■決勝
◇6月28日 ◇システム興産スタジアム
旭町学童野球部(小山)
0000012=3
0000100=1
田沼アスレチックBBC(佐野)
【旭】増山、中嶋─山中
【田】谷、小島、谷─牧原
三塁打/正田(田)
二塁打/川田(旭)
【評】旭町学童野球部は1回表、先頭の大塚凌生がバント安打も、送りバントが二塁封殺、さらにその打者走者も盗塁死し、チャンスメークに失敗。一方の田沼アスレチックBBCもその裏に一死から蛭川桜成、須永嘉人の連打で好機を得ながら、四番・谷航輔の鋭いライナーを旭町のサード・大塚に好捕され、併殺で攻撃を終えると、2回にも死球と暴投、さらに遠藤琥珀の内野安打で一死二、三塁まで好機を広げたが、走者飛び出しによる三振併殺で無得点。その後は試合が硬直し、5回表までゼロが続いたが、その裏、田沼は代打の正田琉桜が左翼線を破る三塁打を放ち、松本陽輝の適時打で均衡を破った。しかし、直後の6回表、旭町は遠藤巧都の中前打と大塚のバント安打に敵失も加わり同点に。勝負はそのまま、無死一、二塁開始のタイブレークに持ち込まれた。延長7回表に旭町は守山朋希の適時打で2点。その裏、田沼はゼロに終わり、旭町が勝利を収めた。
優勝
=33年ぶり2回目

冷静と粘り強さ、“全員野球”光る
最後の打者を空振り三振に仕留めると、一瞬の静寂の後、マウンドの旭町学童野球部・中嶋凌大主将も、各自の守備位置に散っていたナインも飛び上がって喜び、わっと駆け寄った。
「うれしくて。喜びすぎて、本当に優勝できたんだって、なんだか今も信じられないくらいです」
試合前から降り始めた小雨は、試合中にも時折、その雨脚を強め、強弱を繰り返しながら降り続いている。リリーフ登板でチームを勝利に導いた中嶋主将はニコニコと、どんよりと厚い雲を吹き飛ばすかのような笑顔で、その首にかかった金メダルを眺めるのだった。

チームにとっては1993年の第13回大会以来、33年ぶりの大会制覇、そして全国大会出場となる。
「1試合ずつ、全力で戦うことだけを考えてやってはきたんですが、全国を狙うなんてとんでもない。優勝なんて想像もしていませんでしたよ」
荒川晴紀監督も驚きを隠さない躍進だ。
「新人戦は小山大会で負けて、県大会にすら出ていないんですから」
とはいえ、その新人戦で栃木県王者となったのは、同じ小山市でしのぎを削るライバル・羽川学童野球部。とすれば、小山代表になれば、県大会でもある程度は…と考えても不思議ではないが…。
「いえ、そんな考えは全く。とにかく目の前の試合をいっぱいいっぱいで戦ってきただけですよ」

㊤好プレーが光った三塁手の大塚凌生㊨と捕手の山中晴眞㊧。外野陣も好守備で幾度となくピンチを救った㊦

この日は1、2回のピンチを、いずれも見事な併殺で切り抜け、リズムに乗った。「みんながしっかりと守ってくれたから、ボクはストライク先行で積極的に投げることだけを意識しました」と、テンポ良い投球でゲームメイクに徹した先発・増山颯真の好投も光る。
「増山はよく投げてくれました。流れは良かったですね」
指揮官はうなずき、笑って続けた。
「が、いかんせん、点が取れない」
せっかくこちらに来た流れを、得点につなげられない。焦ってミスでもしようものなら、逆に、相手に流れを渡す結果になりかねない。

好投した先発の増山㊤。中嶋主将は5回からマウンドに上がり、最後を締めた㊦

「田沼さんの強さは知っていますし、自分たちの得点能力の低さも自覚していましたから(笑)、ポイントはどれだけ少ない失点でしのげるか、という点だと思っていました。とにかく粘り強く、自分たちのプレーを続けるしかありません」
荒川監督は試合中のベンチでも笑顔を絶やすことなく、冷静な口調で選手たちに指示を送り続けた。
「試合前から、選手たちには『3(失)点以内なら勝てるぞ』と話していたんです。本当に、その通りの試合をしてくれました。勝因を挙げるなら、ロースコアの接戦に持ち込めたことでしょうか」
田沼の強力打線をしっかり抑えた投手陣の頑張りはもちろん、野手陣、とくに外野陣は計算したかのように飛球の落下点に守備位置をとり、打った瞬間、すわ長打か──と思われた打球も、難なく捕球するシーンが何度もあった。そうした姿もまた、守備全体の安心感を醸し出していた。
ただ、その一方で、攻撃ではなかなか決定機を見出せず、5回にはついに、田沼に先制を許してしまう。
それでも諦めることなく、最終6回に追いつくと、タイブレーク7回には、川田大輔のバントで走者を進めた後、「今日はセンターでの好守備といい、彼がラッキーボーイですね」と荒川監督も指名する守山が「真ん中に来た球を、センター返しを心がけて打ちました」と適時打を放って追加点を奪った。

6回表、遠藤が同点のホームイン㊤。延長7回表、守山が決勝の2点適時打を放つ㊦

焦らず冷静に、粘り強く。これが今年の旭町の真骨頂なのかもしれない。
厳しい試合をものにし、いざ、全国へ。
「この大会で、打撃もだんだんと打てるようになってきたと感じています。全国大会も楽しみです!」と中嶋主将は気合十分だ。
大舞台にも臆することなく、自然体で臨む旭町学童。その戦いぶりに注目したい。
準優勝

負けてなお強し、田沼は関東大会へ
序盤に得点機を逸しゼロ行進となったが、5回になんとか先制に成功した田沼アスレチックBBC。勝利はもうすぐそこ…のはずだった。
最終回、失策がらみの失点により土壇場で追いつかれ、タイブレークの末に敗戦。上を向くことなく、表彰式へと向かう田沼ナインの無念は、察するに余りある。
「この4年で、3度目です」
河原真二監督が嘆息する。
3年前の第43回大会、一昨年の第44回大会と、ともにこの大会で準優勝。今回に懸ける思いの強さは並々ならぬものがあったが…。
「やはり、何か(足りないところが)あるんでしょうか…」

先発した谷主将㊤。5年生の小島㊦も好投した

準優勝に終わった昨秋の県新人戦決勝の試合後、「これから春までに、どれだけ選手たちが伸びるか、あるいは、われわれ指導者が彼らを伸ばしてあげることができるか、楽しみ」と、河原監督が語っていた田沼。この日、ベンチで、フィールドで目にしたのは、指揮官の思い通りの結果なのか、想像以上に成長した田沼ナインの姿だった。
「新人戦の後、選手たちは期待通りに力をつけてくれました。今年にかける意気込みもすごかった。一時は力が入りすぎているのか、試合で結果が出ない時期もあったんですが、最近はうまく力が抜けて、良い感じになってきたんですよ」
マウンドは先発の谷航輔主将から5年生の小島千宙、そして再び谷主将へ。スピードと力で押す谷主将と、キレとコントロールが光る小島は、タイプは違えど、この試合でも、いずれも連打を許さぬ好投だった。

5回裏一死、代打の正田が三塁打㊤。そして一死三塁から、松本が先制打を放つ㊦

攻撃面を見れば、得点には結びつかなかったものの、二番の5年生・蛭川桜成と三番の須永嘉人の連打でチャンスをつくった初回に続き、2回にも、死球に続く遠藤琥珀の内野安打で、きっちりと一死一、三塁の好機をつくってみせた。
結果的には、ここを抑え切った旭町の守備の勝利となり、以降、田沼打線が沈黙したことを考えれば“流れ”の恐ろしさということになろうが、いつ再び目覚めてもおかしくない、切れ目のない田沼打線の脅威も感じられた。
攻守にわたり力強く、「今年は例年と比べても違う空気感があって、手応えを感じていたんだけどなあ…」という河原監督の言葉にも納得できる、ことしの田沼ではある。
敗れはしたものの、その強さも十分に披露した田沼。すでに切り替え、準優勝で出場権を得たコントリビュートカップ関東学童、夏野大一番ともいえる県下最大の大会、下野新聞社杯県学童と、次なる目標へと向かう。もちろん、そのすべてを勝利で終える意気込みだ。

試合後、田沼ナインは涙もぬぐわずトンボ掛けをしていた